7月の下旬に、立て続けに2度もお葬式に行くことがあった。
当然ながら突然のお知らせで、準備などしたことも無く、そもそもビジネス上関係がある、と言う自分の立場で言って良いものなのか、どんな格好をして行けばよいのか、香典など持っていくべきなのか、最初はわからないづくしだった。
で、地元の人に聞いた結果、頂いた答えが
1)ビジネス上関係があるからこそ、ぜひ行ってください。会社を代表して行ってください。
2)服装は結構、自由です。ただビジネス関連で会社を代表して行くので、ワイシャツとスラックスとかのシュッとした感じで、黒っぽい色にした方がベター。ノーネクタイで問題無し。ジャケットは着る人はほとんどいないと思うけど、着て行くなら気持ちの表れになるし、恥ずかしい、とかはないはず。
3)香典は会社で出すので、現金をいったん立て替えてください。白い封筒を用意するので、封筒の表に短いお悔やみの言葉と名前を直筆で書いてください(英語)。封筒の中には名刺も同封するとよいでしょう。
4)読経とか焼香とかはないので、行って遺族の方とお話したら、頃合いを見計らって帰ればよいです。
・・・うーん、何か日本の葬式と大枠、同じ感じがする。連絡された会場がジャカルタの北の方にある「Rumah Duka Grand Heaven Jakarta」。周りの人は「あー、グランドヘブンやんか。すぐわかるよ」なんて言ってくれた。
金曜夕方の渋滞を抜け、そろそろ会場の近く・・・と思っていると前方に巨大なショッピングモール様のビルが見える。暗めのガラス張りで、壁面にはキラキラのネオンが、雨だれが落ちるようなグラフィックを描いている。あれだったりして、、、と思っていたら、それだった。
ロビーにはよくある霊柩車が停車中。日本では、昔はキラキラの日光東照宮的な霊柩車も見かけたものだが、最近はこんな感じの黒革張りスタイルが標準になっている気がする。霊柩車はこれがグローバルスタンダード、と言うことなのか。
インドネシアは実質、ムスリム(イスラム)が大多数を占める国だが、宗教の多様性を認めることがしっかり憲法にも定められている。今回の葬式はキリスト教式です、とは聞いていた(この後2週間後に、中国式の葬式にも行ったのだが)。それで葬儀会場ってどんな感じなんかと思っていたのだが、
出た、誤った日本イメージ。
ジャカルタでは確かにムスリムの人が多数派だが、キリスト教徒も結構いるし、ムスリムなら本来ダメな酒を出す店もバンバンある。日本と同じで都会に行くほど宗教の縛りはゆるいのかな、と思ってはいたが・・・これでグローバルな荘厳イメージ、などというモノが表現されているのだろうか。
後で聞いた話だが、ジャカルタのような大都会ではお墓への埋葬も難しくなっていて、火葬や海への散骨もだいぶ広まっているそうだ。このため葬儀会場も、パパっと準備できて人が集まりやすい大規模な葬儀会場が重宝されていて、世界トップクラスの大都会ジャカルタになると、このGrand Heavenのような駐車ビル付き・ホテル付き・10階建てのような会場が成立するようだ。
このため多様な宗教に対応できるよう、環境が整備されていると思うのだが、マーケティングが少し行き過ぎた結果、輝くネオンの建物や、このようなキッチュな飾り物も生まれたのだろうと想像する。
Grand Heavenに入ると、ロビーには個別の葬儀会場に出入りするたくさんの人がいたが、それらの服装は全くの平服だった。つまりは男性、女性とも上はTシャツと、下はコットンのパンツとか。事前に「バティックは派手な感じもするし、違うんじゃないか」、と言う助言もあったのだが、中高年のおじさんでバティック姿もちらほらいた。女性だとまっピンクのTシャツとホットパンツとかもいて、黒一色の日本とは大違い。
こちらは気を使って、ネクタイこそ着けなかったものの、白ワイシャツにグレーのスーツの上下まで着込んでいったのだが、そんなのは自分だけだった。会場で、喪主のきょうだいに当たるおばさまが、スヌーピーのTシャツだったのは、驚くを通り越して、ほっこりした気分にさえなった。
会場に着くと、用意していた香典(?)のお金を、募金箱のような箱に入れる。会社を代表して行ったので、会社の交際費の関連で1.5ジュタを包んだ(交際費の上限を、税法等考慮し、1件3ジュタと決めており、冒頭写真のような花輪で別途1ジュタ強を使ったのでそうした)。普通に個人で行く場合は「気持ち」の金額で十分らしく、そこらへんは、日本より負担は少ない。
ビルの中で区割りされた個々の葬儀会場では、キリスト教式もあれば中国式、あと、よくわからない式、と多様な会場が設営されていた。最近行ったキリスト教式、中国式とも、会場に入ると、ご遺族の方にお声がけし、まあまあどうぞ、と言われて菓子、お茶、お粥などの軽食などふるまわれ、周りの方とお話しし、まあぼちぼち、と言う感じでさよならする、そんな感じ。
読経や焼香タイムがあって、何時から何時、ときっちりしていて、服装もほぼ黒一色の日本のお葬式とは大きく異なっていた、と言えるが、それ以外は、現代的・都会的なマーケティングが進んでいる点も含め、日本とほぼ同じノリ、とも思えたジャカルタ葬儀体験だった。(了)
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