今年(2022年)2月のこと。今年で開都(?)495年になるジャカルタで、最も歴史ある地区である「ジャカルタ・コタ」にふらっと散歩に行った。その時見つけた味わい深いスポットと、その後の顛末についての話。
「トランスジャカルタ」は、“駅”と“専用レーン”を特徴とするバス交通システムだが、この“専用レーン”は、一般車両の流れをなるべく止めないよう、車道の中央に設置される場合が多い。このため“駅”も車道の中央に、島のように建っているのがほとんどで、駅に行くには歩道橋や横断歩道を渡って行く必要がある。
さて、ジャカルタ市北部の海沿いの街、「コタ」には鉄道ターミナル駅があり、そこに接続する形で、トランスジャカルタの大型「駅」もある。鉄道駅から見ると、トランスジャカルタ駅もやはり車道の向こう側にあるのだが、見たところ、他ならよくある歩道橋や横断歩道がなく、行き方がなかなかわからなかった。
よくよく探すと、鉄道駅側に地下道への入り口があり、そこを進めば良かったのだが、その地下道の先に面白いスポットがあった。それがこれ。
バスターミナルに接続する地下モールと、吹き抜けになった地下広場・・・これはまさしく、
ジャカルタの「オアシス21」ではないか。ここから先、「オアシス21」と聞いてピンとくる人にだけ記述します。
例の有名な”池のある屋根”が無いけど、いや、あの屋根の上の池が、この噴水と提灯の池と相似形だから、屋根はなくとも「オアシス21」で良いのだ。この施設の名称が何かは知らないが、見ればオアシス21なぞより相当古いことは明らか。と言うことは、あっちの方が「日本の名古屋にもあった『xxxx』(xxxxは不明)」と言われても仕方ないのだ。日本人は何にでもポエティックな愛称を付けたがるが、こっちには愛称などなくて構わない。
さて、この時はまだそれほどではなかったのだが、後からじわじわと、オアシス21のコンセプトをここまで先取りしたこいつへの畏敬の念が高まり、改めて取材し直そうと8月になって再びコタを訪れたのである。しかし驚いたことにジャカルタ・コタ駅前の車道と、トランスジャカルタ駅、そしてあの「xxxx」は、
跡形もなく取っ払われていた。
ここのところ、LRT Jabodebekの開通に合わせてか、トランスジャカルタの駅々が改装工事を受けていたり、このコタまで地下鉄・MRTの延伸工事が進んでいたりとか、ジャカルタ市内の交通インフラの再整備が進んでいる様子ではあったのだが、コタ駅前がここまで一気に改造されようとしていたとは、全く思いもしなかった。
南半球に存在した、オアシス21の貴重なご先祖様。地下のモール街(=屋台)も、水の宇宙船(=噴水と提灯の池)も、嗚呼、跡形もなく。悲しいことだが、2月にここを訪れることができたのは、ある意味奇跡であった。記憶遺産として、この「xxxx」の記録をここにとどめておく。(こんなん誰も記録しない)
失意の帰途、トランスジャカルタの車内から、囲いの中で取り壊しを待つ「xxxx」が垣間見えた。よく見ると囲いに「MRT JAKARTA FASE-2」、つまり地下鉄第二期工事、って書いてある。そう、こいつはここまで延伸される地下鉄・MRTの駅か線路として潰されてしまうのだ…。ありがとう、xxxx。君の魂は名古屋で受け継がれ、多くのインバウンドを惹きつけている。名古屋の皆さん、こんなところもあったのだと、ぜひ記憶にとどめて頂きたい。合掌。 (了)
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