現在ジャカルタでは、慢性的な交通渋滞の解消と二酸化炭素排出削減を狙い、市内中心部と東部に隣接するブカシ市と、南部に隣接するボゴール市方面とを結ぶ軽量高架鉄道、略して「LRT Jabodebek」(Light Railway Transit。Jabodebekは、ジャカルタ首都圏のJakarta市、Bogor市、Depok市、Bekasi市の頭文字を繋げた略語)の建設が進められている。2016年から6年にわたる工事の結果、すでに路線及び駅などの主要設備はほぼ完成しているが、用地買収の関係で車庫の建設が遅れたこと、また運行用システムの不備が発見されたなどで、開通は早くても2023年となる見込みらしい。
さて、この一大プロジェクトと並行して「LRT Jakarta」という路線がジャカルタ東部のVelodrome~Pegangsaan Dua間、約8㎞だけ完成し、2019年12月から運行している。いずれは南部、ないし北部への延伸が計画されているとは言うが、現在の開通区間は特に交通の要衝や繁華街、ビジネス街などを結んでいるわけでなく、全く中途半端な地域間で運行されている。このため、特に現地在住日本人間では(おそらく地元ジャカルタ人の間でさえも)、全くと言っていいほど話題に上らない。
上の地図からも想像できると思うが「LRTジャカルタ」、そもそもジャカルタ中心部から乗りに行くだけでも苦労するし、郊外をしかも短距離だけしか走っていない。話題に上がらないだけのしょんぼり感が十分予想される。しかしそこは現地現物、この目で実態を確かめることとした。
ジャカルタ中心部からLRTジャカルタに乗るには、「Velodorome」駅を目指さねばならない。今回はジャカルタ市民になじみ深い「トランスジャカルタ」(BRT、Bus Rapid Transit。専用駅と専用レーンを使ったバス路線網)の「コリドー4」に乗って向かった。さほど混んでもなく、専用レーン走行なのでスムースに走行。まあ快適。
グーグルマップの設定が悪く、終点まで行き過ぎてしまった。LRTジャカルタの駅に行くには、この“場末”駅からさらに別のバスに乗る必要がある。しかし、もしまた間違うと、更におかしなところまで連れて行かれるかもしれない、との想像が頭を支配する。このため起きる被害が少なく、最も安全と思われる手段として、徒歩による行軍続行を選択した。
中略。約6.8㎞を歩き切り、当初乗るはずのVelodrome駅とは反対側の終点、「Pegangsaan Dua」駅にたどり着いた。
やっと着きました。改札口。とてもきれい。でもここまでの写真の通り、駅周辺らしい喧噪や風情が全く感じられない。車庫に、取りあえず駅をくっつけました感。これでいいんだろうか・・・
駅には色々と不可思議な点はあったが、ともかく、LRTが入線してきた。
車両は韓国・現代ロテム製で、2両連結のみ。レールはおそらく広軌で、地上から集電する第三軌条方式。空中の架線や支柱がないので車内からの眺めは良さそう。ホームの大きさからは、将来、4両編成への増設も想定されている模様。
さて乗車。車内は、前後方向の長さはゆりかもめ・ポートライナーよりは長く、普通の鉄道よりは短い。幅や高さは都営大江戸線か長堀鶴見緑地線ぐらいか。運転席側に窓が無く、前後方向の展望が望めないのがとても残念。日曜の夕方5時だが、乗客は極めて少ない。いざ発車。
当初、そこから乗るはずだったもう一つの終着駅Velodromeまで5駅、約14分の旅でした。
LRTとトランスジャカルタの両・Velodorome駅をつなぐ「スカイブリッジ」で、ちょっと気に入ってしまったスポットが・・・
ジャカルタの大きな交差点の上空に、がっつり張り出したバルコニーのようなブリッジのコーナー部分。ここからの景色が地味に壮観。下の動画でジャカルタのバイクの騒々しさを実感して下さい。
帰りは行きと同じ、“コリドー4”線のトランスジャカルタ。こいつはボルボ製。乗車直後は穏やかだったが、この後、市の中心部に近づくにつれ、街に繰り出す兄ちゃん姉ちゃんで満員となった。
市中心部の「Dukuh Atas」駅で下車。その近くに、建設中の方のLRTのターミナル駅があった。この駅が、近傍にあるトランスジャカルタと地下鉄MRTの駅に接続する。更には空港まで伸びる鉄道線の駅「Sudirman」駅にも近い。ジャカルタ交通網の整備は進むのだなあ。でも今日乗ってきたLRTジャカルタ、いつか延伸するとは言え、大丈夫なんだろうか。これが現地現物から得た結論。 (了)
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